Twitter活用事例

日産自動車が感じた、テレビ×Twitter連動施策の可能性

近年Twitter活用に注力しているという日産自動車。同社のTwitterアカウントは、自動車メーカーの公式アカウントの中で一番フォロワー数が多い。そこで、本記事ではその活用の背景、直近で行ってきた事例などについて聞き、Twitter活用のヒントを探った。

自動車購入の可能性があるターゲットと広くつながりたい

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、日産自動車の堤さん、海鋒さん、そしてTwitter Japanの大久保さんがそれぞれどういった業務をされているのか教えてください。

Twitter マーケティング 対談

写真左:日産自動車株式会社 日本マーケティング部 ブランド&メディア戦略部 部長 堤 雅夫氏
中央:同部 海鋒 嗣美氏
右:Twitter Japan株式会社 テクノロジー&自動車業界担当 クライアントパートナー 大久保 賢氏

堤:私は、日産自動車で日本マーケティング本部 ブランド&メディア戦略部の部長を務めています。ブランド&メディア戦略部では、日本市場におけるマーケティングコミュニケーションを統括しています。

海鋒:私は堤と同じ部署に属しており、主にテレビとラジオの媒体に関するコミュニケーション企画を担当しています。テレビに関しては、今回ご紹介する事例でも登場するプロ野球のオールスターゲームやワールドカップバレーといったスポーツイベントの協賛などに携わっています。

大久保:私はTwitter Japanのクライアントパートナーとして、テクノロジー&自動車業界を担当しています。日産自動車様のTwitter活用がより良いものになるよう、ご支援させていただいております。

MZ:日産自動車では、近年Twitter活用に注力していると聞いています。それはなぜでしょうか。

堤:我々が販売している商材というのは、CMを見てすぐにお買い求めになるというわけではなく、Webサイトを見たり、様々な記事を検索したり、ディーラーに行ったりして比較検討の上購買いただくものです。そのような「自動車に興味がある」「日産に興味がある」という方に対しては、我々も積極的にコミュニケーションを取ってまいりました。

一方で、「日産のことを良く知らない」「現状自動車の購入は考えていない」が、将来的に自動車を購入する可能性があるターゲットのお客様との関係作りも非常に重要です。中でもTwitterは、その関係作りの役割を果たす上で欠かせないメディアと考え、近年注力しています。

具体的には30代の非日産オーナーをコアターゲットに、日産のブランド・先進技術・関連ニュースなどをお客様にお伝えするためのタッチポイントとして活用しております。

今起きている話題の中から共通点を探る

MZ:フォロワー数が26.3万と、自動車メーカーのアカウントの中でもナンバーワンの数だと思いますが、これまでどのような運用を心がけてきたのでしょうか。

堤:日産で行っていることを常にツイートして、発信していくことですね。そして、日々投稿していく中で意識しているのは「モーメントを捉える」ことです。今この瞬間に起きている話題と我々が提供できる情報の中にある共通点を探し、内容を練るようにしています。

たとえば、直近の事例だと2月3日の『日産の日』に公開したWebムービー「平成と日産」の振り返り企画として、4月19日から4月30日にかけてWebムービーのオフショットをTwitter上で公開しました。「令和に変わる」というモーメントを捉えたキャンペーンは数多くあったと思いますが、我々も日産自動車ならではの形で新しい時代に向けたツイートをしました。

MZ:2月3日で『日産の日』というのは、御社ならではのモーメントですね(笑)。

堤:その他にも最近だと高齢者による悲しい交通事故が多く報道されているのを一つのモーメントとして捉え、「#助手席孝行」というキャンペーンも行いました。我々側も、事故を防ぐための自動運転技術や安全技術の開発、提供に取り組んでおりますが、それだけで今、日本で発生している交通事故の問題を解決することはできません。そこで、夏休みに実家に帰省したタイミングでお父さん、お母さんが運転する車の助手席に乗ってみる。運転をチェックしてみて、あとで話し合ってみませんかと、Twitterを中心に発信しました。

これらの事例のようにTwitterでは、モーメントを捉えながら日産自動車と緩いつながりを持つ人との関係構築に日々取り組んでいます。

テレビとTwitterを連動した施策を行うメリットとは?

MZ:日産自動車のTwitter活用の現状がわかったところで、直近行った施策で効果的だったものを海鋒さんからお伺いしたいと思います。

海鋒:直近良かった施策でいくと、プロ野球のオールスターゲームの開催にあわせて行ったキャンペーンになります。スポーツイベントに協賛した場合、テレビやラジオなどのマス媒体における露出換算しか数値として取れないケースが多いんです。そのため、「テレビを見たことで日産自動車のWebサイトにどの程度来ているのか?」といったことは把握できませんでした。

Twitter マーケティング 対談

海鋒:そこでTwitterとテレビを連動させた施策を実施することで、認知にとどまらないエンゲージメントを獲得するとともに、両メディアの効果を明らかにしたいと考えました。ちょうどオールスターゲームに協賛するタイミングで、2018年度の登録車販売台数ナンバーワンとなったノートに関するキャンペーンを行いました。

MZ:大久保さんにお聞きしたいのですが、日産自動車のようにテレビとTwitterを連携させるような取り組みについての相談は増えていますか。

大久保:年々ニーズが高まっていますね。今回の日産自動車様との施策もそうですが、マス媒体との連動は我々も全社を挙げて積極的に取り組んでいます。

特にテレビに関しては、Twitterと非常に親和性が高いと思っています。なぜならテレビを見ながらTwitterを利用するといったことが、日常生活に浸透しつつあるからです。Twitter利用者の8割以上がテレビを観ながらTwitterを使用しています。

さらに、そのうち半数近くがテレビとTwitterを一緒に使うことで「よりテレビ番組が楽しめる」と考えています。

Twitter マーケティング インサイト

Twitterは利用者同士の会話が生まれやすいプラットフォームです。テレビとTwitterを連動させることによって、Twitterがテレビの話題の受け皿になり、またそこからブランドについての会話が広がっていきます。

野球×自動車で200万超のインプレッションに

MZ:どのようにして、テレビとTwitterを連動させたのでしょうか。

海鋒:テレビ番組との連動感をどう出すかが大事だと思います。我々が訴求したいのは、ノートに搭載されているe-POWERという技術がもたらす気持ちの良い加速性能です。そして、訴求ポイントと野球に共通する部分を探したところ、野球選手の打球速度であればブリッジさせることができるのではと、オールスターゲームに出場している選手で最も打球速度の速い選手を決める「日産ノート e-POWER賞」を設けました。

そして、この賞をどの選手が獲得するかを予想できるクイズを、Twitter上でカンバセーショナルカードを使って実施しました。こうすることで、視聴者の方も「打球速度が一番速い選手は誰だろう」と参加したくなるような仕掛けができました。加えて、普段自動車関係の情報に反応しない人でも、このようなキャンペーンにすることで参加してもらえると考えました。

画像クリック・タップでツイートへ

MZ:確かに野球に関するクイズ形式にすることで、自動車に関する興味関心が薄い人でも参加しやすそうですね。

海鋒:イベントなどでハッシュタグを付けて画像付きツイートを投稿したらプレゼントをあげるようなキャンペーンも実施してきましたが、このようなものだと参加していただくハードルが意外と大きいのです。そういった部分を排除できたのは非常に良かったと思います。

テレビとの相乗効果は?

MZ:では、今回の主目的であるテレビとTwitterによる相乗効果はどうでしたか。

海鋒:今回の施策に関する調査を行ったところ、今回のオールスターの接触者と非接触者におけるWebサイトの流入数に変化がありました。具体的には非接触者に比べて、接触者は140%強のWebサイト流入がありました。

Twitter マーケティング インサイト

海鋒:また、通常のツイートにおけるインプレッションが平均9万インプレッションなのに対し、キャンペーン参加を促すツイートだけで11万インプレッションを獲得することができました。さらに広告配信などの数字を含めると200万インプレッションと、直近Twitterを活用した施策の中では一番広くリーチした施策だったのではないかと思います。

MZ:堤さんはこの結果についてどのように評価していますか。

Twitter マーケティング 対談

堤:我々も様々な媒体でコミュニケーションを行っていますが、年々デジタルに対する出稿比率が高まっています。しかしながら、テレビの持つリーチ力は強大です。ただ、テレビを通じて「続きはWebサイトで」と伝えるだけでは視聴者は動いてくれません。

今回の取り組みでは、テレビで放映されているオールスターゲームの中で起きるモーメントを捉え、視聴者の方にも楽しんでもらえるキャンペーンを通じて、ノート e-POWERが提供する気持ちの良い走りを自然な形で伝えることができました。今後の広告のあり方を考える上で重要な事例になったと思いますし、今後もこのような取り組みを行いたいです。

MZ:大久保さんは、この結果が生まれた要因はどこにあると思いますか。

大久保:一番の要因はマスメディアの力を最大限活かせたからです。当社としてはマスメディアとTwitterは相互補完的な関係にあると思っています。今回の日産自動車様の事例も、マスメディアのコンテンツが持つ大きな力をTwitter上のキャンペーンに活かせたことで、成果を残すことができたのではないでしょうか。

さらに、今回の施策はマスのリーチをTwitterで補完するだけではなくて、テレビのスクリーンを見ながら生活者の手元にあるスマホでアクションを起こさせるところまで実行できました。このような事例を自動車業界で先駆けて行えたのは非常に良かったと思います。

Twitter マーケティング インサイト

さらなる改善と数字の見える化を推進

MZ:最後に今後の展望を教えてください。

堤:我々が課題としているのは、どのように一人でも多くの方に日産に興味を持っていただき、ファンになっていただくかということです。ファンの方にはもっと日産を好きになってもらう、日産や車への関心度が低い方には、「車がある暮らしはいいな」「日産の先進技術はすごい」など、興味関心を持ってもらうコミュニケーションが求められます。そして、それを達成するためにはTwitterの活用は重要だと思いますので、引き続き取り組みを強化していきたいです。

MZ:海鋒さんはいかがでしょうか。

海鋒:今回の施策を数字で見える化するために、Web誘引につながる施策ができればと考えています。たとえば、ツイートをしてもらう際に、特設ページを設けて閲覧してもらうようにするなどして、ブランドリフト調査以外に数字で証明できる成果を作りたいです。

また、今回のキャンペーンはテレビ内では告知ができなかったので、このような施策の番組内で告知を強化しキャンペーンの参加者を増やしていきたいです。そのような改善を通じて、さらなる結果と成果の見える化を推し進めたいと思います。

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