「いい夫婦」から同性カップルも尊重した「いいふうふ」へ - #PoweredBypostsから見えたX活用の新たな可能性

2020年からスタートした 「#PoweredByposts」。この企画は、Creative × Xで社会課題の解決を目指すというもの。広告代理店のクリエイターやプランナーの皆様からアイディアを募集し、受賞したアイディアはNPOとX Next(ツイッターネクスト)*1とのパートナーシップにより、実際のX広告キャンペーンとして実施されます。

今回は、X Japanとしての初めての試みに賛同くださり、見事に受賞を果たした株式会社電通 関西支社CRD局のコピーライターである髙木守氏と、X Nextチームの中川百合から キャンペーンで得られた手応えや、Xから感じた新たな可能性などについて伺いました。

*1. X Nextは、多様な業種の広告主に向けたXのブランドキャンペーン戦略やアイディアの支援をしているチームです。

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株式会社電通 関西支社CRD局 コピーライター 髙木守氏
 

同性婚の課題を話し合う「きっかけづくり」を

―― 最初に、「#PoweredByposts(以下、PBT)」について詳しく教えてください。

中川:PBTは、元々スペインとイギリスで行っていたものを日本で実施した企画です。昨年はXの中でも多くの社会課題が話題になり、様々な声が上がっていました。そんな時だからこそ、「本来Xというプラットフォームで働く人間としてやりたかったことに取り組もう」とPBTを実施することにしたのです。

具体的な内容としては、広告代理店のクリエイターの皆様に向けて、Xが掲げる5     つの社会課題である「環境」、「表現の自由・人権」、「緊急時の対応・災害復旧」、「平等」、「インターネットに関する安全と教育」の中からテーマを選んで、Xを活用してその課題にアプローチするキャンペーンアイディアを考えていただくアイディアコンペです。受賞された方には、その企画に紐づくNPOも選んでいただき、その方々と私たちX Nextが一緒になってキャンペーンを実施しました。昨年は初めての取り組みだったのですが、パイロット版として電通さんと博報堂さんにご案内したところ、100作品を超えるご応募が集まり大変ありがたかったです。

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X Japan株式会社 X Next  シニアブランドストラテジスト 中川百合
 

――髙木さんのチームが受賞された企画案と、その案を選んだ経緯を教えてください。

髙木さん(以下、髙木):僕たちは、同性婚の問題について働きかけるものとして、「従来の『いい夫婦の日』を『いいふうふの日』にしよう」という企画(これまで当たり前に使っている「夫婦」と言う言葉が実は「夫=男性」「婦=女性」、異性婚のみを前提としている言葉だということを指摘するアイディア。「夫婦」を「ふうふ」とすることで、同性婚の方にも配慮した表現にした。)を提案しました。Xが掲げていたテーマが幅広かったので、まずはチームでアイディアを持ち寄ってテーマ決めから始めました。すると、チームにたまたまLGBTQ当事者の方がいて、アイディアを出し合う中の一つとして同性婚の問題が上がってきました。

いま日本で広まっている「パートナーシップ制度」は法的な権利を保障しているものではないのです。あくまでも「自治体はあなたたち2人の関係を尊重します」というものであって、同性婚が認められない限り「ふうふ」としての権利は保障されません。そのことを知って、ぜひこのアイディアで取り組みたいと思うようになりました。

次に、このことをどのように伝えていくかを考えた時に、Xがモーメントを大事にされているプラットフォームであることと、同性婚の課題がなかなか伝わらない中でポジティブに伝えられるタイミングがいい、という点を重視しました。その結果、「いい夫婦の日」(11月22日)が良いタイミングなのではないかと考えました。
 

――世間が「ふうふ」について前向きに語っている日に伝えていくことにしたのですね。

髙木:はい。同性婚の問題は、無関心層が非常に多いことだと思ったのです。僕はLGBTQ当事者でなく、同性婚の問題についても無知でした。かつての僕のように「自分には関係ない」と思っている人たちを動かさないといけません。その人たちに対してネガティブにアプローチしても聞く耳を持っていただけないので、広く共感できるタイミングを狙いました。

中川:私も「同性婚」と「パートナーシップ制度」の違いを知りませんでした。従来の歳時記的な日が、知らないうちに排他的になっていることに気付かされました。「夫婦」という漢字を使うことが、同性のカップルへの配慮に欠けていた。その「夫婦」を平仮名にするということが、アイディアとしてシンプルで素晴らしかったですね。

クリエイティブとプラットフォームの特性を掛け合わせ、会話への参加を促す

――今回、Xを活用した企画を実施してみて、他のメディアでの企画と違うと感じた点や苦労したポイントはありますか?

髙木:Xは、良くも悪くも議論が活発化しやすいプラットフォームだと思うので、やはり炎上リスクは意識しました。今回の企画は、見る側も「広告なのね」と納得して見てくれるものとは違います。色々な考え方をする人がいる中に投げかけていくものです。ですから、受け入れられない人やネガティブに思う人が一定数いる中で、「どうすれば押し付けにならずに聞く耳を持っていただけるか」に注力しました。

中川:普段、コピーライターの皆さんは、言葉を考えて広告クリエイティブに当てはめたときに、かっこよくて素敵なものになるようにと考えていると思いますが、Xでは、それが切り離されて、自分が望んでいないような形で広がっていく可能性もある。会話が盛り上がり、広がっていくこと自体はXというプラットフォームの面白さでもあります。しかし、クリエイティブとセットではない使われ方をすることが、普段のコピーライティングとは違うのではないかと感じました。
 

――X Nextと一緒に企画を詰めていく過程で、心強かった点はありますか?

髙木:僕も仕事とは別にXを日常的に活用していますが、企業や団体の看板を背負って発信するとなると、気にするポイントも違ってきます。そういった時に、X NextさんがXなりのルールやカルチャーに対する知見を持ち合わせているのはとても心強かったですね。

また、Xは広告メニューがたくさんあるので、投票やカンバセーションカードといった選択肢からどれを選ぶのがよいか、一緒に議論していただけたのもありがたかったです。手法がいろいろあることは、やはりマス広告とは違う多様性だと感じます。

テレビCMでは枠や時間帯が重要なので、我々は中身を考えることに注力して、メディアはメディアプランナーに託すといった分業になりがちです。しかし、Xはその広告メニューによって見え方も、受け手による行動や態度変容も大きく違ってくる。媒体も含めてセットで企画なんだなと実感しましたし、新鮮な体験でした。

中川:Xの広告メニューが色々あるといっても、私はそれだけではアイディアにならないと思っています。コアのアイディアや想いがしっかりしている前提で、それを引き立たせるのがX広告です。ですので、「#いいふうふの日」というコアがしっかりしていたから、その効果を最大限出すためにどの広告メニューを使ったらいいか、という議論ができたのがよかったですね
 

――実施後、どのような手応えを感じましたか?

髙木:すべてのレスポンスやツイートには目を通したのですが、予想以上にポジティブに受け止めていただけたなと感じています。ネガティブな反応はあまり目立って見られませんでした。そして、何より同性婚に対して無関心だったであろう人たちが「そうだったんだ」と気づいてくださったことが嬉しかったです。そういった方々が「いいね」だけでなく、ツイートしてくださっていたんです。

ツイートすることは「いいね」よりも勇気がいるし、すごくアクティブな行動だと思うんですよね。ですが、行動してくださった方がたくさんいたことに、すごく意義があったと感じています。

中川:今回、同性婚やLGBTQ+などのトピックに関心がある方とそうではない方の2つにターゲティングを設定して試してみました。すると、結果的に後者の反応が全体的に良かったんですよ。そして、同じハッシュタグの中で、従来の男女の夫婦も同性のカップルもどちらのツイートも見ることができました。男女のカップルの惚気ツイートもいっぱいあったので、その幸せと同性婚の幸せが同じ場所で語られたこと、そしてそれが本来は同じように語られるべきだという気づきが生まれて、とてもいいキャンペーンになったと思いました。

キャンペーンの手法はプレゼントキャンペーンだけではありません。ハッシュタグやコピーに力があれば、X活用の可能性はもっと広がるはずです。

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いかにしてXから世の中に波及させるか

――今までの髙木さんのお仕事の中で、世の中にアプローチする形でXを活用した経験はありましたか?

髙木:2020年の4月頃、X Nextさんと一緒に「#イマデキ」という活動をさせていただきました。コロナ禍において、関西の企業やメディアを含めて、全体で「少しでも前を向いて、一人ひとりが今できることをしていきましょう」というポジティブなメッセージを発信したものです。その発信源の一つとして、Xを活用させていただきました。
 

――「#イマデキ」「#いいふうふの日」のように広告ではない使い方をしてみて、Xというプラットフォームにどのような展望を感じていますか?

髙木:広告だけではなく、世の中に考えや想いを発表していくきっかけとしても、Xは有効活用できると思っています。その際、Xの中で閉じないことが大事だと感じました。

一般的な広告キャンペーンは、X内で終わってしまうことが多い。しかし、今回のような社会課題へのアプローチの場合は、Xで始まるんだけど、その先でアクションやムーブメントになって世の中に波及していくことを常に意識することが大事だと思いました。

Xはどうしても、マス広告があった上でのプレゼントキャンペーンに使われる、というようなプロモーショナルな施策に限られることが多いと思います。でも、今回の企画のように、ハッシュタグやコピーがしっかり力を持っていれば、Xを活用したアプローチはもっともっと可能性があると思います。そうすれば、他の媒体とも連動しながら、もっと議論したり話題にしたりすることができるのではないでしょうか。

中川:今回、X Nextの理想的な協力の仕方ができたと感じています。私たちから何かを作るというよりは、クリエイターさんのスーパーパワーをひき立たせることができるか、という手応えを強く感じることができるコラボレーションになりました。髙木さんがおっしゃる「Xの外と中」とのバランスをとりながら、いかに会話やムーブメントを引き出せるか、ということに今後も取り組んでいきたいと思っています。

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